婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
ブライダル室には、今日も沢山のカップルたちが訪れていた。
「あっ 瀬崎さん あちらに霧島様が瀬崎さん宛てにいらっしゃってますよ。」
お昼休憩から戻ってきた私を見て、一年目の尾崎くんが知らせに来た。
「ありがとう…。」
霧島様は、来月 うちのホテルで式を挙げられる予定の私のお客様だ。
今日来ているのは、新婦の霧島麗子様…霧島財閥のご令嬢だ。
お相手の杉下裕二様は、麗子様のお父様の秘書をされている方なのだそうだ。
「お待たせ致しました。それでは、打ち合わせを始めさせていただきますね…。」
ファイルを開けながら私がそう言うと、麗子様は黙ったまま俯いてしまった。
「あの 麗子様? どうかなさいました?」
明らかに様子のおかしい麗子様に、私は戸惑いながら声をかけた。
「今日 見てしまったの…。」
「えっ?」
聞き返す私に、麗子様は今にも泣き出しそうな声を出した。
「裕二が、会社で元カノを愛おしそうに見つめてるところを…。」
「えっ あっ それはきっと 麗子様の思い過ごしなのではないですか? 裕二様は、来月麗子様とご結婚なさるんですから…。」
それでも 麗子様は首をブンブンと横に振った。
「違うのよ…。裕二はね…本当は今でも、元カノの事が好きなの。私のことなんて、少しも好きじゃない…。裕二が私と結婚するのは、私に対する責任と負い目があるからだもの…。」
ポロッと麗子様の目から涙がこぼれた落ちた。