婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「麗子様…。」
「ほら 私って右足、引きずってるでしょ?
これね 裕二が起こした交通事故で負ったケガなのよ。裕二はね、父のパーティーに参加した私を送る途中、事故を起しちゃつて。最低だけど、私 このケガを利用して裕二に結婚を迫ったの…。どうせ断られると思っていたけど、裕二は責任を取るって言って、当時の恋人とも別れ、私との結婚を受け入れてくれた…。でもねやっぱり 愛されていないって想像以上に苦しくて…。だって 私は、一度もあんな愛おしそうな目で、見られたことがないんだもの…。」
小さく背中を丸めて、肩を震わせている彼女の姿は、まるで 今の私そのものだった…。
麗子様はしばらく泣いた後、少し落ち着きを取り戻し、ホットコーヒーに口をつけた。
「ごめんなさいね 取り乱してしまって…。
今日の打ち合わせは、また 今度でもいいかしら…。」
「はい いつでも結構ですよ。お待ちしておりますね。」
麗子様は私の言葉にコクリと頷いて、笑顔を作って去っていった。
愛する人の心に、他の女性が住み着いている…
そんな彼と結婚しても、きっと 幸せになんてなれないだろう。
傷つくのが目に見えている…。
『そんな結婚 やめた方がいいですよ…』
誰だってそう言うに決まっている。
それでも、愛する人にすがりつく麗子様の気持ちが痛いほど分かるから…。
そんな言葉…私には言えない…。
苦しいよ 圭司…。
お願いだから…
早く 私を思い出して…。