婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
元カノの存在
◇◇◇
両手にスーパーの袋をぶら下げて、マンションに向かって歩いていると、後ろから来た車がプップッとクラクションを鳴らした。
振り向くと、真っ赤なポルシェに乗った夏樹さんが窓から顔を出した。
「なつさん 久しぶり~ 今 ちょうどそっちに行くところだったんだよ さっ 乗って!」
周りを歩いていた女性達の視線が一気に私へと集まった。
『何よ あの所帯じみた女!』というヒソヒソ声まで聞こえてくる。
そりゃそうだよね スーパーの買い物袋なんてぶら下げてる女に、ポルシェに乗った色気たっぷりのイケメンが声かけてるんだもん…。
「夏樹さん ありがとう でも いいよ こんなカッコいい外車がニラ臭くなったら申し訳ないもん…。」
そう言ってお断りしたけれど、夏樹さんは笑いながら、良いから良いからと言って、運転席から私の荷物を奪い取ってしまった。
結局 私は、夏樹さんの助手席にお邪魔して家まで乗っけてもらうことになった。
「やっぱり 不釣り合いだよね 長ネギもニラも…。ごめんね。あっ いけない ネギが!」
私は革張りのシートに、折れて落ちてしまったネギのかけらを慌てて拾った。
「ははは いいよ…。それより 今日は鍋?」
「うん 良く分かったね そろそろ寒いしいいかな~って。あっ 夏樹さん 今日 車だから飲めないか。スーツだし、もしかして仕事?」
「あー 店には出ないけど、ラストにちょっと顔だけ出そうかと思って…。やっぱ 自分の店ともなると気になっちゃってね…。」
「へー もう すっかりオーナーって感じだね夏樹さん…。あっ そこのマンションだから」
「了解…。」