婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「あのさ ゆずちゃん… 名刺の裏に一緒に書いてくれた人って、名前何て言う人かな?」
「あー えっと 確か…井川さんっていう方でした。なつさんに凄く雰囲気が似ている人でしたよ…。」
やっぱり 芹香さんだった…。
でも 芹香さんがどうして?
「その井川さんって、どうして 今日 会社に来てたのかな?」
「あー なんか 今度、バレエ教室始めるみたいで、宣伝を兼ねて挨拶に来たって言ってました…。瀬崎さんにも会いたかったみたいですけど、事情を話したら一緒に書くのを手伝ってくれたんですよね…。」
そっか…
芹香さん こっちに戻って来たんだ…。
「それで、圭司のこと何か言ってた?」
「えっと 始め病院はどこかって聞きてきたんですよ。お見舞いに行くって言って…。だから瀬崎さんは退院してるし、ここ10年くらいの記憶がないから、井川さんのことも思い出せないと思うって言ったんですけど…でも」
「でも?」
「そしたら メアドは前と変わってないかって聞いてきたんですよね… 記憶喪失だって言ってるのに私の言ってること信じてないみたいで… だから そのままだって嘘ついちゃいました。瀬崎さんの携帯って、事故の時、壊れて買い換えてたの知ってたんですけど、なんとなく 彼女には教えない方がいいかなって思ったんで…。」
「そっか…うん ありがとう…」
本当のことを言うと、圭司の携帯は修理に出して直っている…。
でも 芹香さんの連絡先も残っているし、なにより いつか向こうから、かかってくるじゃないかという恐怖心に勝てなくて、直らなかったと嘘をついてしまった。
だから 古い携帯は今でも私が持っている。