婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
病室の前まで来ると、中から圭司と浩太さんの声が聞こえてきた。
まだ 浩太さんだけは残っていてくれたようだ…。
「なあ 浩太。俺は あの なつさんっていう子と本当に結婚しているのか?」
圭司の言葉に思わず足を止めて、耳を傾けた。
「そうだよ おまえは なっちゃんに凄い惚れてるんだよ なんで 忘れちゃうんだよ…。」
「じゃあ 芹香とはどうなったんだよ…あいつ バレリーナの夢どうした?」
芹香さん…。
圭司の口から出たその名前に、胸がズキズキと痛み出した。
そうだ…。
圭司の記憶は、芹香さんに恋をしたままで止まっているんだ…。
「芹香はロシアに行ったけど、一度は挫折して、日本に戻ってきたよ…。おまえの会社の同僚としてさ…。で まあ 色々あったけど、また ロシアへ留学してちゃんと夢叶えたよ。」
「そうか…。」
「まあ おまえもさ 早く記憶を取り戻して、なっちゃん安心させてやれよ!」
「なあ 浩太…。 俺 なつさんをさ、芹香の身代わりにしたんだよな…きっと。いくら芹香との恋が叶わなかったからって最低だな…。」
「は? 何言ってるんだよ! おまえ それで
なちゃんを散々泣かしたんだぞ! 芹香もおまえとよりを戻したいって言ってきて、離婚するとかしないとかまでいって…。でも おまえがちゃんと言ったんだよ… なっちゃんは芹香の身代わりなんかじゃないって。おまえは芹香をフッて、自らなっちゃんを選んだんだよ!」
「…でも 今の俺にとっては、なつさんは芹香の身代わりだよ…。」
圭司の放った言葉が、尖ったナイフのように私の胸を突き刺した。
あまりの痛さに、私は病室を飛び出していた。