婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

圭司は、しばらく入院することになったけれど
私は翌日からホテルの仕事に復帰した。

あの日から、私は圭司に会うのが辛くて、仕事を理由にあまり顔を出していない…。

「なあ なつ  おまえ  旦那に付き添ってなくていいの? いくら記憶喪失だからって、妻なんだからさ…。」

お昼休み、松井くんが心配そうに言った。

大阪に行っていた松井くんは、今年の春に戻ってきて、また一緒に働いている。
部署は違うけれど、こうして お昼休みは一緒に過ごしている。

そして、松井くんと入れ替わるように田辺くんが大阪へ転勤となり、葵はそれを機に寿退社をして田辺くんについて行った。

最近 やっと 葵たちのいないランチにも慣れてきたけれど…。
いつも 一緒にいるのが当たり前と思っていた人達との別れは、すごく寂しい。


圭司とだって、ずっと 一緒にいられるものだと信じていたのに…。
圭司のあの様子だと、きっと私との離婚を考えているに違いない。
だから余計、圭司に会いに行くのが怖いのだ。

「うん ちゃんと夜に着替えを届けに行ってるから大丈夫…。ほら あんまり 私が行っても
向こうも気を使っちゃうしね…。」

「ふーん そんなに他人みたくなっちゃうものかね… 俺がおまえにキスでもしたら、怒って記憶戻るんじゃないの?」

悪戯っぽく松井くんが笑ったけれど、すごく虚しさがこみ上げてきた…。

きっと 圭司は怒らないよ…。
もう 圭司の中に私はいないのだから…。







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