婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

「なつ その話 さっきもあいつが言ってたよな? ゆっくりでいいから…俺にちゃんと聞かせて…。」

今にも泣き出しそうな私に、圭司は優しい口調でそう言った。

私はうんと頷いて、運転席にすわる圭司に体を向けた。

「実はね、圭司と子供を作ろうって約束した日にね、私 病院で検査してきたの。私達 3年間、ずっと子供ができなかったから…。」

「あー だからか あの日、遅くまで帰って来なかったし、様子も変だったもんな…。」

圭司は思い出したように、ぽつりと呟いた。

「うん それでね 検査の結果 私 不妊症だって言われたの。上手く排卵ができない病気だって…。全く妊娠できない訳じゃないし、治療方もあるみたいだけど、何年かかるか分からないし…この先 赤ちゃんができる保証もないの。だから 私じゃ 圭司に幸せな家庭を作ってあげられないよ…。」

俯く私の肩に圭司は両手を置いて、私の顔を覗き込むようにして言った。

「なつ… 俺は子供ができなくたって、なつが隣で笑っててくれれば、それで十分幸せだよ 俺を幸せにできないとか、そんな風に思う必要なんて、少しもないから!」

「圭司…。」

「俺のことなんかより、ショックだったのはなつの方だろ? こんな事、ひとりで抱え込んで辛かったよな…。子供だって、欲しがってたもんな…。」 

圭司はそう言って、私を抱き寄せた。
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