婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
仕事を終え、私は着替えを持って病院へと向かった。
ノックをすると、ハイという返事が返ってきた…。
もう この扉さえ、勝手に開けることに気が引けてしまう。
「あの 着替えを…。」
ドアを開けながらそう言うと、圭司はベッドから起き上がった。
「ありがとう 悪いね 仕事あるのに…。」
「いえ…。」
「あっ 俺さ 明日 退院になったんだ…。松葉杖でなんとか歩けるようになったから…。」
「えっ… あっ 良かった…。」
私は着替えをしまいながら笑顔でそう言った。
「で…ホントに申し訳ないんだけど、しばらくの間、別々に暮らしても…いいかな?」
「えっ どうして…?」
手を止めて、私は圭司の方に振り返った。
「いや 俺さ きっと 君の知ってる俺じゃないと思うし… たぶん すごく 傷つけちゃうと思うから…。記憶がもどるまではさ…」
なんとなく そうやって言われる気はしてた。
だって 今の圭司の中には芹香さんがいるのだから…。
そりゃ 私 傷つくよね…。
今回は耐えられないかもしれない…。
それでも…。
私は、窓際に飾ってある薔薇の花を見つめた。
あの日 私にキスをくれた優しい圭司の顔が目に浮かぶ。
もう 私は圭司から逃げない…。
この 現実からも…。
「あのね 圭司。圭司が今本当に好きなのは芹香さんだって、ちゃんと分かってるよ。そっくりな私を見て戸惑ってるのも…。確かに、傷つかないって言ったら嘘になるけど、私は それでもいいから。だから お願い 私にチャンスをちょうだい… 記憶が戻らなくても、もう一度、圭司のことを振り向かせてみせるから。」
私の言葉に、しばらく圭司は考えてから、ゆっくりと顔を上げた。
「分かったよ。こんな思いさせてごめんな…」