婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

そんなことは言われなくたって分かってる。
こっちは、なつを失うかもしれない恐怖と毎日戦っているんだから…。

俺は記憶が戻らないことを浩太に打ち明けた。
珍しく弱気になっている俺に、浩太はそんなに思い詰めるなよと肩を叩いた。

話の途中で、なつが仕事から帰って来た…。

なつは浩太を前に、明るく振る舞ってはいたけれど、やはり 無理して笑っているように見えた。

浩太が帰り、なつがお風呂に入っている間
俺はベッドに横たわりながら、なつと公園に行った日のことを思い出していた。

なつは公園で、小さな子供を連れた家族連れを羨ましそうに見ていた。

いいな~と呟いたなつに、俺は思わずこう言った。

『じゃあ 作ろっか 子供…。』

言った途端、しまったと思った…。
なつは今の俺となんて、嫌に決まってる
そう思い慌てて謝った俺に、なつは嫌じゃないよと首を振った。

『私 圭司の赤ちゃん 欲しいよ…。』

なつの言葉が希望をくれた。

まだ 記憶が戻るとも分からない俺との子を、
なつが望んでくれている…。

なつが、今の俺と向き合おうとしてくれていることが、何より嬉しかった…。

『来週 このギブスが取れたら…作ろっか』

でも そんな約束を交わした後、なつは買い物に出たきり、遅くまで帰って来なかった…。

全然、連絡の取れないなつがとにかく心配で、
俺はマンションの前で、なつの帰りを待ち続けた…。

8時を過ぎて、ようやくなつは帰ってきたけれど、なつの様子は明らかに不自然だった。
友達と話し込んでしまったというなつに、俺は誰といたのかと問いただした。

『誰って… 圭司に言っても分からないよ…』

なつの言葉にカチンときて、結局 何も聞けないままになってしまったけど、なつはこの日から、何かを思い詰めているような、そんな辛い顔を見せるようになった…。
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