婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
私は圭司の隣にちょこんと腰を下ろした。
「実はこれね 圭司が今まで使ってた携帯なの。圭司には事故で壊れたって言ったけど、本当は修理に出して直ってたんだ…。」
そう言って私は、圭司に携帯を差し出した。
圭司は、『そうなんだ…』と言って、受け取った携帯を物珍しげに見ていた。
「その携帯にね 芹香さんからの、メールが来てる…。暗証番号は1015だから見てみて…。」
「えっ ああ 」
携帯の画面を操作する圭司を、私は緊張した面もちで見つめていた。
圭司は芹香さんからのメールに、一体どんな反応をするだろうか…。
ロシアにいて手の届かない存在だった芹香さんが、実は日本にいて圭司からの連絡を待っているとなれば、圭司の心は揺れてしまうかもしれない…。
一気に不安が押し寄せてきた。
ああ なんで わざわざ、こんな余計なことをしてしまったのだろう…。
芹香さんのメールに切ない表情でも浮かべられたら、私はきっと耐えられない…。
怖くなって俯いた瞬間、圭司が呟いた。
「ふーん 日本に戻ってきたのは、バレエ教室の為だったのか…なるほどね。はい ありがとう…。」
圭司が携帯を、私の手の中に戻してきた。
「えっ もういいの?」
呆気なく返された携帯に戸惑いながら、私は圭司にそう尋ねた。
「芹香とはもう連絡とるつもりもないし、この携帯も必要ないから捨てていいよ…。」
確かにその言葉は、私の望んでいたものだったけれど…。
圭司の言葉にホッとする自分と、それは、本当に圭司の本心なのだろうかと疑う自分がいた。
「ホントにいいの? 芹香さんのメール見て本当は会いたいって思ったんじゃないの? 私に気兼ねとかいらないから、ちゃんと本当のこと言って…。」