婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

ホテルのロビーを見渡すと、ソファーにすわって携帯をいじる芹香さんらしき女性を発見した。

「ねえ 圭司 あれ 芹香さんじゃない?」

「ん? どれ?」

「ほら 髪をアップにして、黒いワンピース着てる人!」

「あー 確かに そうかも…」

圭司は向きを変えて、芹香さんの元へと歩き出した。
しばらくぶりの芹香さんは、以前よりもふっくらしたように見えた。

「芹香…。」

圭司の声に顔を上げた芹香さんは、立ち上がるや否や、圭司の胸に抱きついた。

「圭ちゃーん 久しぶり! 来てくれてありがとう!」

そう言って満面の笑みを浮かべる芹香さんは、
圭司への執着心が数年前よりもパワーアップしたように感じる…。

「芹香…分かったから とりあえず離れろ…」

圭司は慌てて芹香さんを引き離した。

「で? こんなとこに呼び出して、俺に何の用?」

「もー 久しぶりに会ったのに、随分 素っ気ないのね… あれ? なつさんも一緒?」

ようやく 芹香さんは、私の存在に気づいたようだ。

「芹香さん  お久しぶりです。」

そう言って挨拶した私を見て、芹香さんは不思議そうに首を傾げた。

「ん? もしかして 圭ちゃんって なつさんのこと思い出したの? なんか 10年分の記憶を無くしてるって聞いてたんだけど…」

「いや 記憶は… 」 
「あの 芹香さん!」

圭司の言葉を遮るように、私は声を上げた。

「あの 圭司は確かに記憶喪失ですけど、ちゃんと私のことが好きです。今は私達夫婦として愛し合ってますし、もう圭司の中には芹香さんはいません! だから どうか 圭司のことはもう諦めて下さい! 圭司へのメールもこうして呼び出すのも、これで最後にして下さい!」

よし 言えた!
なんか 恥ずかしいこと言っちゃった気もするけど、この際仕方がない…。
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