婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

でも 芹香さんから返ってきたのは、想定外の言葉だった…。

「やだ~ なつさん 私 圭ちゃんに未練なんて全然ないんだけど…。」

「えっ ないん…ですか…」

固まる私に、芹香さんは平然とした顔で答えた。

「うん ない…」

「や でも 少しくらいは…」

「少しもないけど…」

そんなことってあるだろうか…
あんなに会いたいってメールしてきたのに、全く未練がないだなんて…

死ぬほど恥ずかしい思いをして『圭司は渡さない宣言』までしたのに、これは一体どういうことなのだろう…

納得のいかない顔の私を見て、芹香さんが言った。

「そんなに心配しなくても、圭ちゃんなんか取らないわよ さすがに私だって懲りてるもの いくら 記憶喪失で私を好きだった頃の圭ちゃんだって言われても、あの頃の圭ちゃんだって、本気で私のことなんて愛してなかったみたいだし? 留学を引き止めなかったのも、そういうことだって、三年前の圭ちゃんに言われたもの そんな男をいつまでも想ってるほど私も暇じゃないのよね~」

芹香さんは、恨めしそうな顔で圭司のことをチラッと見た…。

「へえ~ 俺 そんなこと言ったのか…」 

圭司はごめんと謝ったけれど、特に否定する様子もない…。

いいのかな…
圭司は、芹香さんに誤解されたままで…
10年前の圭司は、決していい加減な気持ちで芹香さんと付き合ってなんかいなかったのに…

「あの 芹香さん 前にも言いましたけど、圭司は芹香さんを本気で愛してましたよ…じゃなきゃ 2年間も芹香さんのこと引きずりませんよ。それに 記憶喪失になってからだって、初めの頃は『芹香 愛してる』って寝言で言っちゃうくらい、芹香さんを想ってたんですから~。」

「へえ~ そうなの? そんなに私って愛されてたの? じゃあ やっぱり 圭ちゃんのこと諦めないで、頑張っちゃおうかな~ 」

そう言って、芹香さんがニヤリと笑った。
あっ なんか 私マズいこと言っちゃった??
< 88 / 140 >

この作品をシェア

pagetop