婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
記憶のカケラ
あれから、半年…。
圭司の記憶は戻らないままだけど、私達は幸せな日々を送っていた。
赤ちゃんへの望みも、まだまだ 捨ててはいない…。
あの後すぐに、私は不妊症の治療を始めた。
周期的に排卵を誘発する薬を投与して、その週はひたすら圭司に抱いてもらうのだ…。
今日は、ちょうど、産婦人科の通院日…。
仕事の休みを利用して、私はひとり病院へと来ていた。
診察を終えて廊下に出ると、顔なじみの看護士さんが私の肩をポンと叩いた。
「瀬崎さん 今夜はチャンスだからね 旦那さんにも、頑張るように言うのよ~」
「あ はい そうですね… そうします」
私が笑顔で答えると、看護士さんはにこりと笑って去っていった。
露骨にエッチを応援されるという…こんな照れくさいやり取りにも、ようやく 私も慣れてきた…。
病院からの帰り道、圭司から電話がかかってきた。
『もしもし なつ? 病院どうだった?』
『うん ちょうど終わったところ…。今夜は圭司にも頑張るように言えって、いつもの看護士さんに言われちゃった…。』
『はは また あの おばちゃんか… わざわざ 言われなくても頑張るから、ほっといてくれって感じだよな…。』
クスクスと笑いながら、圭司が言った。
『あっ でも 今日、圭司って会社の飲み会だよね?』
『うん そうだけど… 一次会でこっそり抜けるつもりだから10時には帰るよ。なつこそ、今日は美優ちゃんとご飯食べに行くんだろ?』