婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「そんなことないよ 実際 ママって大変なんだなあ~って参考になるし…。逆に色々教えて欲しいくらいだよ!」
「そお…? でも もし 不快だと思ったら遠慮なく言ってね…。」
「もう 美優は気~使いすぎ! 不快だなんて思わないから、愚痴でも何でも話してね!」
美優は私の言葉にホッとした表情で頷くと、メインディシュのお皿に手をつけた。
「そうそう この間 圭司さんと浩太、二人で飲みに行ったじゃない?」
思い出したように、美優が切り出した。
「うん なんか 随分遅くまで飲んできたよね~」
あの日は、お酒に強い圭司が珍しく酔っ払って帰ってきたのを覚えている。
「実はね これ なつに言っていいのか分かんないんだけど…」
「えっ… なに?」
美優の真剣な顔に、私は思わず手を止めた。
「うん… 浩太から聞いたんだけど、圭司さんね 自分の記憶が戻らないのは、なつのあの事件が、何か関係してるんじゃないかって思ってるみたい…。」
「あの 事件?」
「ほら 婚約者がヤクザだったっていうあの事件…」
「えー そうなの?」
「なんかね 思い出そうとすると、酷い頭痛と一緒に、なつが男に縛られてる光景がフラッシュバッグのように浮かんでくるんだって…
でも なつからはそんな話は聞かされてないし、もし本当のことだったら、なつを苦しめるかもしれないから聞くに聞けないって悩んでたみたいだよ。一体なつはどんな酷いことをされたんだろうって辛そうな顔してたって…。圭司さん もしかしたら なつの過去を一緒に背負ってあげられないことが、今は何より辛いんじゃないかな~? 余計なお世話かもしれないけど、ちゃんと圭司さんには話してあげた方がいいかもしれないよ。」
そっか…
きっと圭司の記憶の片隅に残っているのは、春君にストーカーされてレイプされそうになった事件の方だ…。
圭司には、言いづらくて一切話していなかったけれど、圭司の記憶が戻らないことと、何か関係しているのかもしれない…。