婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「圭司…」
思い返せば、いつも、圭司はこうやって私に謝っていた。
『守ってあげれなくてごめん』
全然 圭司のせいなんかじゃないのに…
それどころか、命をはって助けてくれたのに…
圭司は自分の責任だと、罪の意識でいっぱいのようだった。
事件から2年も経っているのに、夜中にうなされることもあったし、私のことを常に心配していた。
もしかしたら そういうトラウマが、圭司の記憶を封じ込めてしまったのかもしれない。
「あのね 圭司 私はもう あの時のことは全然引きずってないよ… 確かに、幼なじみにあんなことされてショックだったけど、もう 二年も前の事だし、それに 圭司がすぐに助けにきてくれたから…。」
「なつ…」
「圭司はね 責任感じて、ずっと自分を苦しめてたんだよ… ちゃんと助けに来てくれたのに守ってあげれなくてごめんって謝ってばかりで… むしろ反省しなきゃいけないのは、隙のあった私の方なのに…。事件の後も、私のことをいつもいつも心配してて… きっと 私のせいで 圭司は記憶喪失になっちゃたんだよね ごめんね 圭司 もう辛い思いはしなくていいから 何にも思い出さなくていいよ 圭司の心が軽くなるのなら、記憶喪失のままでいて!」
ポロポロとたくさんの涙が、私の目からこぼれ落ちた。
圭司は、目を大きく見開いたまま、しばらくの間、黙って私のことを見つめていた
ハッと我に返った圭司は、私の涙を手で拭いながら、こう言った。
「不思議だね なつ… 思い出してって言われても全然戻らなかった記憶なのに、思い出さないでって言われた瞬間、戻るなんて…」
「えっ…」
顔をあげると、圭司がふっと笑った。
私は、しばしの間、その言葉の意味を考えた。
「え!! うそ…」
信じられないけど、今ので記憶が戻ったの??
「ただいま なつ ありがとな 呪縛を解いてくれて…」
そう言って、圭司は私の口にキスをした。
ようやく私の元に、本物の圭司が帰ってきた。