婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
翌朝、私は、いつものように圭司の胸の中で目を覚ました。
『なつ 俺は、ちゃんとなつとの8年間を思い出したよ もう 二度と忘れない…』
耳に残る圭司の声…
あれ…
これって、夢だったのかな…
急に不安になって、隣で眠る圭司の胸をポンポンと叩いた。
「圭司 起きて…」
「ん なつ…?」
ゆっくりと圭司のまぶたが開いた。
「おはよう 圭司…」
「おはよう… あれ まだ 早くない? 今日はなつも仕事休みだろ? 昨日 あんなに体力使ったのに元気だね…」
クスクスと笑いながら、私をからかうのはいつものこと…
果たして、今の圭司はどっちの圭司なのだろう…
「ねえ 圭司 私と初めてキスした場所って覚えてる?」
「ん? 場所? あー 覚えてるよ なつの実家の近くの公園だろ?」
「良かった… 夢じゃなかったんだ~」
嬉しくなった私は、圭司の胸にギュッと抱きついた。
「大丈夫だよ なつと初めてエッチした時のことだって、ちゃんと覚えてるから… なつが初めてイッた時のことも…なつが初めて俺の…」
「もういい もういい もう すぐ 圭司は下ネタに走るんだから! せっかく感動してたのに台無しじゃない!」
プッと膨れる私を見て、圭司が可笑しそうに笑った。
記憶を無くした圭司だって、十分私を愛してくれていたけれど、やはり 思い出を共有できるというのは、本当に嬉しいことだと思った。
「あっ そう言えばね 刑事さんが圭司の記憶が戻ったら、話を聞かせてくれって言ってたんだよね… 結局 ひき逃げした犯人、まだ 捕まってないみたいで…」
「あー 俺 覚えてるな…バイクのナンバー」
「えっー 本当に!?」
「うん 覚えてる 前後の記憶は全然ないけど、ナンバープレートの数字だけは頭に残ってる… 後で警察に行かないとな…」
「うん そうだね! 凄い 圭司…」
「いや ホント あの日は、ごめんな…。せっかくの結婚記念日だったのにな…」
すまなそうな顔で圭司が謝った。
「ううん 生きててくれただけで十分… 圭司が生きてさえいてくれれば、結婚記念日なんて何度も来るんだから…」
「ありがとな 来年はちゃんとお祝いし…あっ
そうだ! 思い出した!」
圭司はそう言って、急にベッドから起き上がった。
そして クローゼットの中をゴソゴソとあさった後、きょとんとする私の目の前に、小さな箱を差し出した。
「これ 遅くなっちったけど、なつにプレゼント…」
「えっ… あ ありがとう…」
突然のプレゼントに驚く私を見て、圭司か照れたように笑った。
「ホントは結婚記念日に渡すつもりだったんだけどな…。中 開けてみて?」
「あっ うん…」