溺愛レンズ
学校から歩いて15分走って10分の所にある高台は意外にも遠くて長い道のりに感じた。
ラストスパートの公園にある長い階段を上る頃にはすっかり息が切れていて「はぁはぁ」と肩で息をするほど。
やっと着いた…
上まで登りきり膝に手を当て呼吸を深く整える。
上体を起こして一歩踏み出した時、思わず私はそこで足を止めた。
「………っ…」
ファイルが置いてあるはずの木星のベンチ、そこには昨日の彼がいたからだ。
昨日よりも近くで見る男はやっぱり綺麗で、きっと何度見ても息を飲んでしまう。
古びたベンチに座るその姿は、栗色の髪が風になびいてゆらゆらと揺れまぶたは伏せられている。
そんな時、長いまつ毛が何かを察知したかのようにピクリと動きそしてゆっくりとその瞳が開かれた。
男の瞳は次に私を捉えそしてアーモンド色の目が私を視界にうつす。