溺愛レンズ
「おい」
「…………」
「おい」と確かに彼はそう言った。
けどそれが私に向けられているとは到底思えなくて、
いや…正しく言えば彼は私を見ているんだけれど起きて早々知り合いでもない私に「おい」と言うとは思えなくて
もしかしたら私に言ったわけじゃないんではないだろうかと思い、周りをキョロキョロと見渡す。
だけどほとんど誰も来ないこの高台の公園に私と、ましてや彼以外の誰かがいるはずもなく…
「お前に言ってんだけど」
やっぱり彼は私を見てそう言った。
昨日の今日で…というか昨日盗撮した今日でまたここに来たとなっては、もしかしたら本当にストーカーだと勘違いされたのかもしれない。
もういっその事走って逃げるか。
けど、だからといって写真のファイルを探さないといけない私はそんな事出来るはずもなくて…
「……はい…」
震えながら小さく返事をするしかなかった。