溺愛レンズ
「また盗撮」
「えっあ、つい…」
レンズから顔を外すと、特に怒った様子ではない彼が、ニャンコに目を向けたままそうボヤく。
「まぁ、良いけど」
「え?良いんですか…?」
この間は「消せ」って言ってたのに。
今日はいいの…?
その態度の変わりっぷりに、軽く首を傾げる
。
「そのかわり、絶対他の奴に見せんなよ」
栗色の髪が風でふわりとなびき、そして少し切れ長な綺麗な瞳が私を見つめた。
「…見せません」
「なら良いよ」
何だかこの人の雰囲気は凄く独特で…そして不思議で…まるで何かに吸い込まれるみたいにシャッターを押したくなる。
まるで初めてカメラを買ってもらったあのときみたいに。