溺愛レンズ




「また盗撮」




「えっあ、つい…」




レンズから顔を外すと、特に怒った様子ではない彼が、ニャンコに目を向けたままそうボヤく。





「まぁ、良いけど」




「え?良いんですか…?」





この間は「消せ」って言ってたのに。
今日はいいの…?




その態度の変わりっぷりに、軽く首を傾げる





「そのかわり、絶対他の奴に見せんなよ」




栗色の髪が風でふわりとなびき、そして少し切れ長な綺麗な瞳が私を見つめた。




「…見せません」





「なら良いよ」





何だかこの人の雰囲気は凄く独特で…そして不思議で…まるで何かに吸い込まれるみたいにシャッターを押したくなる。




まるで初めてカメラを買ってもらったあのときみたいに。




< 27 / 50 >

この作品をシェア

pagetop