溺愛レンズ
思わずそう心の声が、口からポロリとこぼれ落ちていく。
そんな私の言葉に、有馬さんは何ら動揺もすることなく
「あぁ」
とだけ言ってのけた。
「………」
「あぁ」って…これはそんな一言で終わるような話しなの?
いや、よく考えれば気が付かない私が可笑しいんだけれども。
こんなにも有名な人で、テレビでは見ない事なんてないのに、
ましてやしょっちゅうアキラちゃんにカナデの話は聞いていたはずなのに。
だってあんな誰もこない高台の公園に芸能人が来るなんて思う!?しかも売れてない人ならまだしも一流芸能人が!!
会ったことあるとは思ってたけど…
会ったことがあるんじゃなくて、一方的にただ私が有馬さんの顔を知ってただけとは。
「でも…名前有馬なんじゃないの…?」
何かの間違いだと思いたいのか、ただ疑問が口から溢れて来ただけなのか
そう口にした私を有馬さんは表情一つ変えることなく
「有馬カナデ」
「あ…なるほど…」
「まぁお前は、俺がカナデだって気が付いてないんだろうなと思ってた」