溺愛レンズ
そう言った有馬さんは、特に表情を変えることなく…ただ私を見つめている。
「え?どうしてですか?」
これは純粋な疑問だった。
だって別に有馬さんがカナデで芸能人だったからといって、何か変わる要素なんて何一つない。
「俺を知らない奴に会うのは何か久々で、お前といると気がぬける」
そっか、そうだよね
きっとカナデを知らない人なんてほとんどいない。老若男女問わず人気のある彼。
街を歩いても、お店に入っても、ご飯を食べるにも…きっと必ず注目が集まる。
きっと彼はそんな毎日にどこか少し疲れていたのかもしれない。
だからあの高台の公園できっと遠くを見つめていた。
何故だかそう思った。