溺愛レンズ
「だから、お前に嫌われるのは何か嫌だ」
その瞳は、さっきとは少しだけ違くて…
どこか奥深くが揺れているように見える。
嫌いになんてなるわけない…
なんでか分からないけど、有馬さんと一緒にいると…私も心地よく感じる。
その感情が、彼も一緒だったというとこに少なからず今嬉しく思っている私はどうしちゃったんだろう。
「テレビや雑誌に出ているカナデの事なら、もちろん私も知ってました」
まぁ有馬さんがカナデとは気が付いてなかったけど。
「そんな有名人で遠い存在の人が、まさか今私の隣にいるなんて信じられない事なのかもしれない」
「…………」
「でも…私にとっての有馬さんは、あの日高台の公園で会ってから一緒に時間を過ごして来た有馬カナデだから。だから引いてもないし嫌いにだってもちろんなりません」
そう答えた私に、有馬さんはどこか楽しそうに「ふっ」と小さく笑うと「やっぱりお前って変わってる」と言って、私の頭へポンっと手を置いた。