溺愛レンズ
「まぁでも、レイらしいか」
「…好きな人なんていた事ないしね」
「焦る必要はないよ、好きな人なんて気が付いた時には出来てるものだから」
「気が付いた時には?」
「そうそう。いつの間にか目で追ってて、いつのまにか何処にいてもその人ばかり探してて、そして気がついた時には恋に落ちてるの」
いつのまにか目で追っていて…その人ばかり探している。
そんなアキラちゃんの言葉に、不意に頭に浮かんで来たのは有馬さんの姿だった。
いつも公園に着いたら彼がいないか探してる…
そしてそんな彼を見つけたら…いつの間にか目で追ってばかりいるんだ……
でも、それは…恋ってわけでは……
「では、後一時間で消灯時間だ!一組から順にコテージに戻れー!」
学年主任の先生の声が、キャンプファイヤーで照らされた夜空に大きな声で響く。
「あ、もうそんな時間?戻らないと。レイ行くよ」
立ち上がったアキラちゃんは、先に歩き出していたクラスメイトの後ろを追いかけるようにして歩き出す。
「杉咲?行かないのか?」
そんなアキラちゃんの背中を見るばかりで、一向に立ち上がろうとしない私を不思議に思ったのか後ろにいた佐伯が私の肩をポンっと優しく叩いた。