溺愛レンズ
佐伯とは中学から同じ学校で、っていっても同じクラスになった事はないから話すようになったのは高校になってからなんだけど
「そんなとこにしゃがみ込んで、何かあったのか?」
ジャージ姿の佐伯は首からタオルをかけている所を見ると多分部活の途中なんだろう。
「うぅん、何でもないよ」
それに対して、何ごとも無かったかのようにしゃがんでいた体制を直して笑顔で立ち上がる。
「佐伯こそどうしたの?」
「あぁ、俺は明日英語の小テストがあるの思い出してノート取り来た」
そう言った佐伯の手には確かにしっかりとノートが握られていて
「佐伯って勉強したりするんだ?なんかいつも部活一番ってイメージだから」
小さくクスリと笑って見せると
「お前何気に失礼」と言いつつ怒ったそぶりなんて見せないでノートをパタパタと揺らす。
「まぁでも普段はしないな、前回のテストが壊滅的すぎてヤバかったんだよ」
「なるほど、確かにいつも授業中寝てるもんね」
「まぁな、育ち盛りだから」
スラっとした長身にバスケ部だからほどよい筋肉質な身体。あきらかにこれ以上育つ必要はなさそうだけど。
「じゃあ俺 そろそろ戻るわ」
首にかかってるタオルで汗をぬぐうその姿は何だかやけに絵になって見えて、少しだけ見惚れてしまう。
「うん!部活頑張ってね」
「お前もな」
佐伯に小さく手を振ると、佐伯は目を細めて笑いながらノートを持ってる方の手を上げて教室から出て行った。