好きだと言って。[短篇]



ぎゅっと抱きしめられたその腕を信じてみたくなった。ぎゅっと抱きしめるその腕を離したくないと思った。



「哲平…好き。」

「…当たり前だろ。」



そう言うと、くいっと持ち上げられる顎。絡まる視線、感じる温もり。その全てに私は瞳を閉じる。


ゆっくりと重なる唇に、
私はぎゅっと哲平の背中に手を回す。




「…ん」


少し開いた間から、哲平の舌がスルリと入ってくる。口内を犯すその舌に私は声を漏らす。



少しお酒臭い哲平に
私はドキドキする。



「…家、泊まるだろ?」

「え…?」



捕まれたのは腕ではなく手のひら。
ぎゅっと手を回されたのは腰。



「で、でもお母さんに…」


ふぇ…!?
その瞬間ちゅっと軽く唇が触れた。


「俺が電話するから。…つーか、もう帰すなんてできねぇよ。意味分かる?」


!!

かーっと赤く染まる頬。
満足そうに笑う哲平。



「朱実、期待してたんだろ?」

「し、してないっ」

「…逃がすかよ。」




そう言って笑った貴方の顔に
ずきゅん、と胸が高鳴った。



「俺の前で男の名前出すの禁止。…修輔だっけ?アイツ、誰?」


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