好きだと言って。[短篇]
機嫌の悪そうなあの顔。
キスを求めたあの顔。
全部全部ヤキモチ?
「お、お兄ちゃん。」
「…は?」
「だ、だから、お兄ちゃんだって。…哲平が初めてだもん。付き合うの…」
「…。」
なんだか恥ずかしくて、そっとバレないように哲平の顔を盗み見た。
「え…」
「マジ?」
にっと口元を上げ、満足そうに微笑む哲平と視線が重なった。なんで、そんなに嬉しそうなんだろう…?
「…マジ。」
「じゃあ、たっぷり教えてやるよ。な?」
「なっ!」
口をパクパクさせる私を、怪しげな笑みで見つめ、哲平は私の手を引く。いつもならバイクなのに、今日はお酒が入ってるから歩き。
「…哲平、お酒臭いから嫌。」
「関係ねぇよ。…つうか、もう抜けた。」
「嘘!」
まだほんのり顔が赤いし、
匂いだってするもん。
「…バイバイなんて言われて、鍵も返されて、酔いも醒めたっつの。」
「そ、それは…」
ふわっと離れた手。
急に離されたせいか寂しく感じた。