好きだと言って。[短篇]






「哲平、今日何食べたい?」

「別、何でも良いけど。」




合鍵を使って玄関のドアを開け、リビングに進むと哲平はいつものように新聞を片手にテレビに見入っていた。




「…ハンバーグは?」

「だから、何でも良いって。」



少し香るタバコの匂いにも馴れた。

必要以外のものが置かれていないこの部屋にも馴れた。




でもね、

「さっさと作って。」



貴方の冷たい言葉には
どうしても馴れることが出来ないんだ。


ほら、また胸がチクってなった。



「…うん。ごめんね。」




きっと仕事で疲れてるんだ、きっと会社で嫌なことがあったんだ、そう考えられていた昔の自分がいかに幸せモノだったか、今になって気が付いた。



哲平の態度は…
いつになっても変わらなかった。




「はい。…出来たよ。」



少し茶色の髪に、
広い肩幅。

高い背に鋭い眼差し。



「…。」




無言で机に座り、
私の作ったハンバーグを食べる哲平。




「おいしい?」

「…普通。」



ねぇ、哲平は私のこと、どう思ってるのかな?都合の良い女?家政婦?…ねぇ、教えてよ…。




「そっか。」



それでも私は偽りの笑顔を浮かべる。仮面をかぶったかのように嫌な顔一つしないで哲平を見つめる。



ブーブーブーっ


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