ここにあるもの。
彼の薬指



仕事をする真剣な彼の横顔が
格好良いと思った

優しく微笑む彼が
愛しいと思った


それでも彼の左の薬指には
他の誰かとの愛の誓いがある


不倫なんて馬鹿げてると思ってた

奥さんのいる男の人を
好きになった友達の話を聞いて
私には理解できなかった

結婚している人を好きになるなんて
絶対ないと思ってた


けれど初めて
わかった気がした


不安だらけの新しい環境で
いちからすべて教えてくれた

困ったときは
すぐに助けてくれた

それはとても頼もしく思えて


それはいつしか
恋に変わってしまう


けれど私は大丈夫

私はそれを知っている

きっとこれは錯覚だと
きっと恋なんかではないと


だから私は
薬指に填められた指環に
微かな嫉妬を隠す



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