ここにあるもの。
からっぽ
「君は....だ」
そう言って彼はクスッとわらう。
「何て?」
聞き取れなくて聞き返す。
「君はいつも、楽しそうに笑っていて」
「そんな君の周りには常に人で溢れてる」
「けれど」
それから少し黙った彼の視線は私を射抜く
「君の笑顔の奥底は少しも笑ってなんかない」
"そうでしょ?"
そう、私を見透かしたように彼はわらう。
「退屈で退屈で仕方ない」
「何をしても満たされなくて」
「そんなことっ…」
次から次へと貫く言葉
聞きたくなくて耳を塞ぐ
縮まる彼との距離
それはゼロになって
私の手を耳から離す彼の手
私の耳元に近づく彼の唇
嫌に優しく響く彼の声
「君はからっぽだね」