ここにあるもの。
涙のダム
「泣いても いいんだよ」
彼は長い睫毛を
ゆっくりと伏せて
ほんの少し
笑ってみせる
そんなことに
私の瞳から涙がおちた
泣いた後は嫌いだった
瞼は腫れて視界が悪く
渇れた喉は痛くて
けれど
泣きはらして
きっと酷い顔をした私に
彼は長い睫毛を
ゆっくりと伏せて
ほんの少し
笑ってみせて
「もう、大丈夫」
彼がそう言った
だから
きっと
私は大丈夫