protect you〜守るべきもの〜
悲しそうな榊の視線を振り払うように、顔を背ける。
ふと目を向けたフェンス。
赤く、血に染まっていて、ドクンと心臓が冷たく脈打った。
頭を振ってもう一度見ると、それはただのフェンスだった。
安堵の息が自然と吐かれる。
幻覚、か……。
...これだから、話したくなかった。
言葉にしたらあの記憶が蘇ってきそうで、怖かった。
榊と銀髪も、案の定気まずそうな顔つきになってるし。
...もう、こいつらと関わるのはやめだ。
「これだけ聞けば分かったろ。
俺は、自分を弱くする仲間なんかいらねぇ」
そう言って踵を返そうとすると、肩をガシッと掴まれた。
……この感じ、銀髪野郎か...。
骨が折れそうなくらい強い力に顔をしかめながら振り向く。
何を言われるのかと思っていると、発されたのは意外な言葉だった。
「歩、何も知らねぇのに色々言って悪かった」
「え……あ、あぁ...」
「けどよ。
お前、このままずっと過去に縛られて生きていく気か?」
「……何?」
「お前はこの先、復讐だけを目的に生きんのかっつってんだよ!」
...は?
なんでお前が怒るわけ?
意味分かんねぇ。
怒られる筋合いなんか、ねぇんだけど。