protect you〜守るべきもの〜
「歩……楽しませてよ。諒真さんに勝って、強いことを証明してよ」
微笑みを浮かべながら、榊は言う。
今更、辞める…とか言えねぇな。
「お前…頭おかしいんじゃねぇか……?」
「うん、よく言われる」
だろうな。
でも…その狂った奴に諭されて、妙にやる気を取り戻した俺も、きっと狂ってる。
「分かったよ……やってやる」
「…それでこそ、だね!」
「黙っとけ仔犬」
軽く笑いをこぼし、地面に手をついて立ち上がる。
「お、話はまとまったか?」
飽きて座り込んでいた銀髪も、ワクワクした顔で立ち上がった。
……さて、どうするべきか。
真正面から向かって行ったんじゃ、きっと勝てない。
力だけだと負ける。
それなら、俺の最大の武器……身の軽さでケリをつけるか?
いや、それも見破られるに違いない。
じゃあ何を使えばいい…?
チラリと後ろを見ると、すぐ背後に小さなプールがある。
自宅の庭にプールとか、外国かよここ。
・・・待てよ。
普段はゲーム以外であまり使わない脳を、回転させる。
「……そう言うことか、よ」
分かった。
どうして榊が、『庭』で喧嘩をしろと言ったのかが。
俺にも、逆転のチャンスはあるってことか。