protect you〜守るべきもの〜
「ったく……真浩に『可愛い』は禁句だってのに」
…マジかよ。
誰が見ても明らかに『可愛い系』の榊に「可愛い」って言うとキレるのかよ。
本人も気にしてたのか。
「歩ー、悪いけど、僕先に殺っちゃうよ。こいつらムカつくもん」
「……お前キャラ変わりすぎだろ」
「そうかなぁ?あ、でもね、いくら歩でも、僕に『可愛い』って言ったら我を忘れちゃうかもしれないから気を付けてね!」
うわ、こっえー…
榊に言ってはいけない言葉は『可愛い』か。
……まぁ普段から言わないからいいか。
「ってことでー………お先!!」
俺が考えている間に、榊はトンと地面を蹴って走り出す。
そして目にも止まらぬ速さで……5人ほどの男達をなぎ払った。
「ぐっ……!!」
「ほらほらー、反撃しないとやられるよ?『可愛い茶髪君』にさ!」
いつもの榊からは考えられないほどの軽いステップ。
……これが、あの『榊真浩』なのか?
小柄で華奢なのに、ガタイのいい男たちを簡単に吹き飛ばしてやがる…
『一見可愛い仔犬も、本気を出せば狂犬なんだよ』
あの銀髪…このことを言ってたのか。
なるほど、確かにこの光景は『狂犬』がしっくりくる。
でも……俺は、コイツに負けるわけにはいかねぇ。
榊より多くの奴らを倒して、強いことを証明しないと。
……じゃないと、あのときの記憶を振り払えない。
「榊ぃぃっ!!てめぇだけ楽しんでんじゃねぇよっっ!!!」
焦り半分、興奮半分、俺も大きく前に跳んで攻撃を開始した。