それだけが、たったひとつの願い
「懇意にしているプロデューサーがいると言っただろ? その人が長編ドラマの話を逆に依頼してきたんだ」

「長編……」

「ああ。しかもジンが主役でね」

 ショウさんの戦略では、足がかりとしてまずはスポットの短編ドラマでジンを売り込もうとしていた。
 それがいきなり本格的な長編ドラマでの抜擢となれば、こちらとしては願ったり叶ったりだろう。

「だから由依の脚本はまたの機会になる。すまない」

 誠心誠意私に頭を下げるショウさんに、恐縮しながら「頭をあげてください」と私は言葉をかけた。

「いいんです。長編ドラマに起用されるだなんてすごいじゃないですか」

 やはり芸能関係の仕事をする人なら、誰もが惹かれるジンの魅力や特別な光に気づくのだ。
 そう思うと、私まで自分のことのようにうれしくなった。

「てっきり由依にも長編ドラマの話はジンから伝わってると思ったが、まだだったか。アイツごねてるからな」

「……ごねてる?」

 私が首をかしげると、ショウさんは参ったというように盛大な溜息を吐き出した。

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