それだけが、たったひとつの願い
それだけが、たったひとつの願い

1.聖なる夜の別れと出会い

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 吐き出す息が真っ白なこの季節は吸い込む空気が冷たいし、乾燥していて喉が痛い。
 だけど首元に巻いたマフラーは、今は若干暑いくらいだ。
 履き慣らしたはずの黒のパンプスもつま先が痛くなっている。
 でも今はそれを気にしている余裕はまったくなく、私は髪を振り乱しながら往来をあわててひた走る。

「すみません、遅くなりました!」

 バイト先のカフェへだどり着き、一目散に店長に駆け寄ると深々と頭を下げた。
 遅れるとわかった時点で電話を入れたとはいえ、十五分の遅刻だ。

「そんなに焦らなくてもよかったのに」

 店長は私の姿を視界に捉えると、あきれ気味に緩慢な笑みを浮かべた。
 やさしくてダンディな店長が神様に見えた瞬間だった。
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