それだけが、たったひとつの願い
「もう絶対離さないから。逃げるなよ?」

「ジンが浮気したら逃げるかも」

「は? 」

 冗談めかして私が言うと、ジンは納得がいかない顔をして私の頬をもてあそんだ。

「だって世間じゃ『抱かれたい男No.1』でしょ?」

「だけど、その男が抱くのは由依だけだ」

 そう言ってチュっと額にキスをされると、つい先ほどまでの情事を思い出して途端にカーッと顔が熱くなってきた。

「はは。照れてる由依はかわいい」

 ジンが綺麗な顔で笑っていて本当に良かった。

「ずっと俺のそばにいろよ」

 これからも彼とこうして笑っていたいし、彼の笑顔を守りたい。

 自然体でほほ笑む彼を見て、やっと素直にそう思えた。


< 263 / 281 >

この作品をシェア

pagetop