それだけが、たったひとつの願い

2.真冬の台風

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 朝目覚めると知らない天井が視界に映り、私は昨日家を出たのだったと寝ぼけながらも自覚した。
 なぜこうなったのだろう。昨日のことが夢みたいに思えたけれど、これは紛れもない現実だ。

 ベッドから起き上がり、洗面台で顔を洗ってからキッチンへと向かう。
 仕切りがなく繋がった空間のリビングに視線を移すと、ジンが毛布にくるまってソファーで眠っていた。
 そんなところで寝たら風邪をひくかもしれないと一瞬心配になったが、部屋は暖房がきいていて暖かいから大丈夫だろう。

 とりあえずジンを起こさないように、静かにケトルでお湯を沸かした。
 勝手に飲んでいいと昨日教わっていた個包装のドリップコーヒーとカップを拝借する。

 やはり相馬さんに申し訳ないので、今後は自分で買い足そう。
 食費だけなら私のバイト代でまかなえるし、なにからなにまでお世話になっていてはいけない。

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