それだけが、たったひとつの願い
 キッチン脇のダイニングテーブルには、バイト先でもらったケーキの箱が置いてあった。
 私が帰って来て真っ先に冷蔵庫にきっちりしまっておいたのだが、ジンがそれを発見して取り出したのだろう。

「美味そうなチョコレートケーキだよな」

「中身まで見たの?」

「それ目当てで来たんだから」

 言葉の意味が理解できないでいると、ジンが立ち上がってこちらに近づいて来た。

「売れ残ったケーキ、絶対持って帰ってくると思った」

 ジンはスマホを素早く操作すると、ニコリと笑って私の目の前に画面を見せつける。

「お宝画像もゲット」

 スマホの画面にはジンが撮ったと思われる写真が映し出されていたのだけど、私は驚きすぎて固まってしまった。

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