それだけが、たったひとつの願い
 今日は十二月二十五日だから、あと六日で新年だ。
 ジンはお正月、比較的温暖な台湾でゆっくりと過ごすのだろうか。

 私はバイトに励みながら、きっとここでひとりでお正月を迎えるのだろう。
 そう考えただけで、身体も心も震えそうだ。

「話変わるけど、これは由依が書いたのか?」

 ケーキを切り分け、紅茶を淹れていた私に、ジンが不意に話しかけてきた。
なんのことだろうかと視線をジンのほうへ向けた途端、焦って熱い紅茶を零しそうになってしまう。

「なんでそれを持ってるの!」

「来たときに由依がリビングにいなかったから、向こうの部屋かなと思って覗いたら机にこれが置いてあった」

 ジンが薄い冊子を片手でヒラヒラとさせながら私に笑いかけているが、他人の私物を勝手に持ち出したのだから、少しは悪びれてもらいたい。

「面白い話だな」

「読んだの?!」

「で、これは何の台本?」

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