政略結婚に隠された真実

コンコン


しばらくベッドの中でバタバタと暴れていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「お嬢様、松野でございます。入りますよ。」

ぽっちゃりとした50歳ぐらいの松野と名乗ったこの女性、松野志保まつのしほさんは朝霧家の家政婦さんです。

愛梨が生まれてすぐぐらいに、新人家政婦さんとして家に来たらしい。
それから松野さんは、ず~っとこの家の家政婦として頑張ってくれている。

「失礼します。お嬢様。おはようございます。」

そう言いながら、部屋に入ってきた志保さんは、換気だと言いながら窓を全開にし、
愛梨のベッドの横まで歩いてきた。

「―――うわっ!!志保さん!!」

松野さんは、力いっぱい掛布団をひっぺはがし、私の目を見てにっこりとほほ笑んだ。

「お嬢様、もう9時過ぎましたよ。休日ですけどちゃんと起きなければ体内リズムが狂いますよ。
 ほら、旦那様と奥様がお呼びですよ。身支度を致しましょう。」

そう言われてしぶしぶ起き、シャワーを浴び、服に着替え、軽くお化粧をして部屋を後にした。




階段を降りると、リビングではお父さんとお母さん、そして婚約者と名乗った大翔が談笑していた。

「なんであんなに打ち解けてるの?」
眉をひそめながらぼそっとつぶやいた。

「・・・お父さん、お母さん、おはよう・・・」
いつもは普通に、元気に挨拶するんだけど、昨日の事が納得できてないという思いから、
目もあわさずに、少し反抗的に言ってみた。

だって、こんな時にも元気に挨拶とか、そんな気分になれないし、私の気持ちも理解しろっての!


「おはよう、愛梨。今日はやけに反抗的だな。」
お父さんは、くっくっと笑いながら挨拶した。くそぅ・・・楽しそうにッ!!

「おはよう、愛梨!うふふ♡今日も良い天気ねッ」
お母さんは言わなくても分かるけど、・・・ハイテンションだわ・・・。
ほわほわオーラが舞ってるし、笑顔がいつも以上にキラキラしてる。ある意味だけど。

はぁ、私はこんな不機嫌オーラ出してるって言うのに、お構いなしだわ。
ははは・・・と思いながら、父と母の向かい側に座る大翔っていう男をチラッと見た。


う・・・。
何も声を発しないけど、すごく優しい笑顔でこっちを見てる。
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