政略結婚に隠された真実

それに気づいた父が、改まったような声色で、口を開いた。

「愛梨。改めて紹介しよう。こちらに座っている方が、碓氷大翔くん。愛梨の婚約者だ。」

「おはよう。碓氷大翔です。これからよろしくね」
すごくにこやかに挨拶をした大翔をキッとにらんだ。

「おはようございます、碓氷さん。生憎ですけど、この話は納得しておりませんので、
　わざわざ気を使って頂かなくて結構です。婚約なんてしてませんし。」

そう言って、ふいっと顔をそらして、キッチンの方へ向かおうと足を向けた。

「ふふふ。残念だけど、納得してもしなくても、決定事項だよ」

余裕な返事が返ってきて、余計にイラッとした。

絶対結婚なんてしないし！って心の中で叫び、だんだんだんと足音を立てそのまま歩き出した。
そんな私の行動を見て、お父さんと碓氷さん(名前なんて呼んであげないし！苗字で十分！)は楽しそうに笑っていた。

信じられない!!私で楽しむとか有り得ないわッ！


ふぅ、仕方ないわね。と母はつぶやき、くすりと笑った。

「そういえば、愛梨。昨日あなた、また新くんに送ってもらって！
　いい加減、自分の飲める量覚えなさい。お酒は飲んでも、呑まれたらダメよって言ってるのに。
　あ、新くんが起きたら電話欲しいって言ってたわよ。後でかけてお礼を言っておきなさいよ！」

私のピリピリした空気を読んだのか、ハイテンションだった母がその場を和ます様に言った。
母ナイス！とか思って、私も普通に返事をした。

「は～い、そうする～。新なんか文句言ってた？」
「特には言ってなかったけど？あ、志保ちゃんがご飯作ってくれてるから、さっさと食べちゃってね～」
「ん～・・・もう食べてる。志保さんのご飯、相変わらずおいしいわ～」

リビングで楽しそうに話してる人たちを横目に見ながら、朝食を摂った。

私はと言うと、もちろんムカムカしていたけど、志保さんの作ったご飯で少し癒された。

あ、そうだ。新に電話しなくっちゃ。

電話することを思い出し、ささっとご飯を食べ、自分の部屋に戻った。




リビングを出る際、愛梨に向けられていた視線に、何も気づかずに・・・