政略結婚に隠された真実
馬鹿うましかグループの連中に、私は馬鹿にする様な言葉を投げつけられることが多い。


今回も資料庫や書庫室、お手洗いへと歩いていると・・・


「社長令嬢、あの男誰?男と無縁な令嬢の話で持ちきりだよ。」

「エントランス前でキスとか、勇気あるね~。やっぱり朝霧さんって普通じゃないのね。」

「もしかして、今時珍しい政略結婚とかの相手とか!!それウケるんですけど~!!」

「相手は誰?どんな人?どこの御曹司?結婚するのか?寿退社するのか?まぁ、弟が専務で姉が平社員なんだから寿退社が良いんじゃないか?」


団体行動の大好きな馬鹿うましかグループにつかまると、こうなるのだ。

見ず知らずの人に口々に言われる嫌味な言葉に、さすがの私も一瞬は心が傷つく。



私だって、好きで男に無縁の令嬢してる訳じゃない。
私だって、好きでエントランスでキスした訳じゃない。ものすごく普通だし。
私だって、好きで政略結婚する訳じゃない。ウケないし。
私だって、好きで正体明かして平社員してる訳じゃない。私だって努力してる。


悔しくて、言い返したいけど言い返せない自分に腹が立ち、目に涙が溜まっていく。

だけど、こんなところで泣くわけにはいかない。
こんなバカな人たちに弱いところなんて見せたまるかッ!!

唇をぐっと噛み、涙が流れないように我慢した。

平気を装い、何も気にしてないという平常な姿勢を取った。
そして、周りの視線やヒソヒソ声にイラッとしながら、今日の秘書室での仕事をハイスピードで終わらせた。


しかし、会社の顔にもなりえる秘書が、あんなプライドの塊かつ人間的にどうかというような嫌味な性格だなんて、ほってる会社もダメだわ。ってお父さんも慧維も気付いているだろうけど、改革が必要だわ。

私、イライラして円形禿になったら、ボイコット起こすわよッ!


内心毒付ながら、顔は笑顔で、THE女優。

さっさと仕事を終わらせて、最後にニッコリ笑顔を湛え、「ごきげんよう~」と嫌味を言って秘書室を出た。

そして、営業部の自分のデスクへと戻った。
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