政略結婚に隠された真実
「で?何かあった?怖い顔してるのはほんとだよ?」
椅子に座っている私に心配そうな顔を近づけた。
予想以上に顔が近かったことにビックリはしたが、張り倒すほどの近さでもないのでスルーした。
だけど、私、そんなに怖い顔をしているのかな?
“先日いきなり婚約者があらわれ、結婚することが決まってるそうです!しかも、今日朝からエントランスで降ろさせて、みんなの注目の的ですよ!!ヒソヒソヒソヒソ言われて腹立ってるんですッ!!”
なんて、プライベートの話をしても、河内さんも困るでしょう。
それに、私もプライベートの事をべらべら話すことでもないし。
う~ん、と考えた末に。
「何もないですよッ!怖い顔なんてしてませんしッ。河内さんの資料作るのに疲れただけです。河内さんに頼まれる資料作るのって、かなり難しいし大変なんですよっ」
ごまかしてみる。実際に河内さんの資料作成レベルめっちゃ高いし。
難しいのは事実。
しかし河内さんはにっこりした。
「ふ~ん。でも、この資料、先週末には仕上がっていたよね?俺知ってるよ?」
「げッ!なぜッ!?」
うっそ~。何でそんなこと知ってるの!?
私は眉間に皺を寄せ、思いっきりイヤ~な顔をした。
まぁ、この人に仕事やり方、進め方など事細かに教えてもらったりしてるから、どうしても河内さんと仕事の進め方とか優先順位とか似てるんだろうから、知ってても当たり前かもしれないけど。
河内さんは口の角を上げ、ニヤッと笑った。
・・・この笑顔、すごく嫌な予感がする。
「今日の朝のエントランスでの出来事、面白いことが起きたね」
「ッ!!」
私はキッと目を吊り上げ、あんたもか――――――――っ!!と心の中で叫んだ。
「私がイライラしてる理由、・・・知ってるんじゃないですかッ!!」
ムキー!っとなってる愛梨を見てますます河内さんは笑った。
「朝からあんな所でド派手なことして、この俺が知らないと思う?そうじゃなくてもこの話は本社中広まってるから、直接見てなくても分かるよ。ただし、尾ひれはひれ付きで」
くつくつ笑いながら、私をからかって楽しんでいる。
「私だって好きで目立った訳じゃありませんッ!」
河内さんがからかってることを分かってはいたけど、冷静になれずキーキー怒りまくった。