エリートな先輩の愛情を独り占め!?

「席、向こう空いたみたいだよ。よかったね」

お、恐ろしい……あの笑顔向けられたらもうなんも言えないわ……。私は八谷先輩の笑顔を見つめながら、どうして八谷先輩がそんなに怒っているのかを疑問に思っていた。
彼女たちは軽く会釈をしてそそくさと席を後にしたが、私たちは暫く沈黙のまま食事を続けた。
その空気に耐えられなくなり、私はボソッと呟いた。

「カレー……、美味しそうですね」
「んー? うん、美味いよ」
「なんか機嫌悪くなってません? 先輩の切れポイントがよくわからないのですが……」
私にとっての切れポイントは惜しみなくあったけどな。なんで八谷先輩の機嫌が悪くなっているのか、さっぱりわからない。もしや私のために怒ってくれている? いやいや、そんなまさか……とにかくここは機嫌を直さなくては。

「……八谷先輩っ」
「うお、なんだよ」
私は、八谷先輩のスプーンを八谷先輩の手ごと握って、カレーをすくって口に運んだ。
すると、口の中にまろやかなコクとスパイシーな香りが広がって、脳の中にあるであろう幸せ中枢を一気に刺激された。淡白な味のものばかり食べていた私には、とんでもないご馳走で、ただのカレーなのにその美味しさに涙が出そうになった。

「お、美味しい……美味しいですカレー」
「お、おう……」
「こんなにカレーって美味しかったですっけ……インドの食文化に感謝しきれない……」
「……ぶ、はははっ」


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