エリートな先輩の愛情を独り占め!?
先輩後輩の関係
この会社に勤めて四年目になる。昨年初めて後輩の指導にあたり、その時直接指導したのがタマだった。
一応菓子メーカーでは大手のこの企業は、新製品も開発しているものの、対企業との仕事が七割を占めている。とくにチョコレートの加工に対する技術力は多くの製パン業者や菓子メーカーに信頼されており、様々な要望に応えて材料を売っている。
東京支所はまさにその中枢であり(本社は大阪で、新商品の開発などはそちらがメインとなっている)、俺は開発の部署に属している。
大学院では理工学部に所属していたが、実際こっちにきて使える知識なんてあまりなかった。一年目は終電ギリギリまで試験の練習をし、二年目はひたすら先輩の補佐をしながらノウハウを磨き、三年目は後輩の指導にあたり、四年目の今は上司と一緒に企業と打ち合わせをしながら製品開発のチームリーダーとして働いている。
五味検査での成績や、理系の院卒であること、そして一年目に取った資格や会議での発言などを統合して、任命したと後から教えてもらった。
「もうちょっとコスト面、どうにかなりませんか」
お得意先である大手菓子メーカーの吉崎さんが、苦い顔でそう相談してきた。
今は春季に発売する苺トリュフアイスの中に使用する、生チョコについて話し合っている。吉崎さんの要望通り、口どけがよく、酸味のある苺アイスとの相性もよい、柔らかな生チョコソースを開発したが、味はいいけれどコスト面でもう少し下げられないか、とのことだった。
「開発部としてはかなりギリギリのところで調整して作り上げた製品なので、正直その要望は苦しいところがあります」
俺の発言に、吉崎さんはますます眉根を寄せた。
「コストを下げるとなると、一番原価の高い生クリームの量を減らさざるをえなくなり、御社がもっともこだわっている口どけにも変化が出てしまいます」
「それは困るなあ、どうにかならないか」