エリートな先輩の愛情を独り占め!?
どうにかならないか、という言葉が出ると、ほとんど話が進まなくなってしまう。このまま打ち合わせを続けても平行線になると感じた俺は、この場では一度話を持ち帰ろうと決意した。
その時だった、横に座っていた上司の志賀さん(部署は営業である)が、今まで発言していなかったにも関わらず突然口を開いた。
「現時点では難しいところもありますが、弊社の技術を駆使して必ずよい製品に致します。今度の打ち合わせの時には、改善した試作品をお持ち致しますので、何卒よろしくお願いします」
「そうか、頼むよ。こことは随分長い付き合いをさせてもらっているからな。では、今日はこの辺で」
「お送りいたします、お忙しいところありがとうございました」
……なんだと? 今度の打ち合わせまでに残された期間はたった二週間だ。それまでに相手の要望を全て受け入れた製品を試食の段階まで持っていくなど無理だ。
全く開発部のことを考えていない発言に、頭に血が上りかけたが、吉崎さんの前でそんな醜態は晒せない。
俺は怒りをぐっと堪えながら、吉崎さんを見送った。
「……次の打ち合わせまで、たった二週間ですよ。コスト面の計算も込みで試食段階まで持って行くなんて不可能に等しいです。新製品チームは今三つの社との開発を掛け持ちしていることはご存じですよね」
会議室で二人きりになってから、怒りに震えた声で切り出すと、志賀さんは資料を鞄にしまいながら呆れた口調で言い放った。
「中小は後回しにして、今はお得意先の大企業との仕事を進めるべきだろう。そこの調節も君の役割だぞ」
「スケジュールを変更しろと……? 新製品ラッシュのこのシーズンに?」
「どうにかならないのか、頼むよ」