エリートな先輩の愛情を独り占め!?
どうにかならないことを投げ出したら、それがどれだけ部下に負担がかかるのか想像ができないのか、この人は。
あまりに勝手な言い分に、怒りで頭の中が真っ白になってしまった。
「君、今年から異例のスピードでリーダーになったようだけど、少し臨機応変さに欠けるようだ。周りは君に期待しすぎなんじゃないか?」
くそ、くそ、くそ、くそ、くそっ!
思い出しただけで腸が煮えくり返る。あのタレ目鼻ボクロめ、この前六本木のキャバクラで暴れてたこと、社内に噂流してやろうか。
苛立った様子でデスクに戻ると、周りの後輩は明らかに血気だってる俺に気づき、触れたら危険だ、というように目を逸らした。
昼休憩はとっくに始まっているというのに、腹が全く空かない。グルメの俺が食欲がないなんてよっぽどだ。
今は飯なんか食ってる場合じゃない、原価の高い原料を洗い出して、テクスチャをなるべく変えないようにコストを下げる方法を考えなくては。今日中に一人で考えられるところまでパターンを出して、明日には試作できる段階にまで持っていかないと間に合わない。ただでさえ今年は新入社員が多くて時間を取られているんだ。
間に合わない、時間がない、やらなくては。俺が一人で。
「……八谷先輩、大丈夫ですか? 般若みたいな顔になってますよ」
眉間にしわを寄せながらコストの計算をしていると、上から少し驚いたような声が降ってきた。