エリートな先輩の愛情を独り占め!?
「なんで、なんでハチ君はそうやってすぐに仕事を取るの? 昔はドタキャンなんてしなかった!」
「学生時代とは違うんだよ知佳、君も社会人ならわかるだろ」
「なんでそんな疲れた顔すんの? 知佳が悪いの? 違うよね、ハチ君が約束破るのが悪いんだよね?」
「知佳、そうだよ、約束破った俺が悪い。だけど破りたくて破ったわけじゃないんだ、わかってくれ」
「変わったよね! やっぱりハチ君変わったよ! 昔はこんなに冷たくなかった、もっと私のこと好きでいてくれた!」

昔は、昔は、と言われると、頭が痛くなってくる。
こんなに長く付き合っていて、すべてが不変だったら不自然じゃないか。社会的立場も変われば、当然優先順位だって変わる。彼女はそれを全く理解してくれない。

あ、まずい。今日なにも食べていないせいで、頭がクラクラしてきた。
「ハチ君は知佳が好きじゃないの!?」
「好きだよ……ちゃんと好きだから、知佳」
「じゃあ抱いてよ、今すぐ抱いて」
泣き腫らした目で、知佳が真剣な顔でそう言い放った。俺は相当目眩がしていたけれど、知佳は俺にキスをして、俺をベッドに押し倒した。
朦朧とした意識の中で、これ以上彼女の気持ちを不安定にさせまいとそのキスに応えた。

彼女をこんな風にさせてしまったのは、自分自身だから。

 
* * *
結局昨日は知佳の相手をしてから仕事をしたおかげで一睡もできなかった。
出勤してからもなんだか常に目元付近が疲れていて、脳がちゃんと起きていないような倦怠感がある。

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