エリートな先輩の愛情を独り占め!?

「本社の大阪行っちゃったら、タマちゃんも寂しくなるね」

私も就活当初は、自分の考えた商品が店頭に並ぶことが夢だと語った。しかし、段々と働いているうちに、自分の性格的に、案を出して積極的に発言して形にしていく仕事よりも、品質管理部でお客様の信頼を失わないように緻密な作業を行う方が肌に合っているのかもしれないと感じるようになった。

「確かに寂しいけど、でもそれは八谷先輩の夢だもん。叶うといいな」

八谷先輩のように仕事ができる人を毎日目の当たりにしていると、自分との力の差を思い知らされ、色んな諦めが出てくるのも本音だ。
本当は私もいつか店頭用の商品開発に行きたいけれど、素質ってやつが私にはない気がする。エリートすぎる八谷先輩といると、そう感じてしまうのだ。


* * *

「あー、疲れた」
帰宅すると彼が真っ先に口にする言葉はこれだ。
あー疲れた、が聞こえたら、私は真っ先に彼の鞄を取りに行って、おかえりなさいと言って微笑む。これ会話になってないなあと、毎回思いながら。
「今日ご飯どうする?」
「あーごめん、今日もう食べてきた」
「……そういう時は連絡入れてって言ったじゃん」
「ごめん、スマホいじれる時間がなかったんだよ」
竣介は高頻度で約束を破ったりする。週末は私がご飯を作るってわかっているはずなのに。
竣介は、私がお願いしたことをこうやって重く受け止めずに流すことが多い。

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