エリートな先輩の愛情を独り占め!?

「は、八谷先輩……」
「ん? どうした、おんぶするか?」
この気持ちをどう表現したらいいのかわからない。
でも、今私は、竣介じゃなく八谷先輩に会えたことを嬉しく思っている。

八谷先輩、私はあなたを尊敬しています。あなたは、私の憧れの先輩です。
「あ、会いたかったです……」
私の口はばか正直で、どんなに遠回しな言葉を心の中で並べても意味がなかった。
尊敬してるとか憧れてるとかヒーローとか、そんなんじゃなくて、私は今ものすごく八谷先輩に会いたかったのだ。

八谷先輩は、意表を突かれたような表情をして、丸い目で私を見つめていた。



あの後、私は激痛で蹲り、その場にしゃがみこんでしまった。八谷先輩に支えられながらタクシーに乗り込み、自宅まで運んでもらった。家に帰り温かい飲み物を飲んで横たわると、一過性の痛みだったのか、だんだんと症状は和らいでいき、普通に座っていられるほどにはなった。

しかし私は今、非常に困っている。なぜなら八谷先輩と部屋の中で二人きりだからだ。そして八谷先輩は私のソファで爆睡してしまっているからだ。
私を家まで送って看病した後、疲れ切って眠ってしまったのだろう。私も気づいたら寝てしまっていて、起きたらもうすでに二十三時を回ろうとしていた。起きたら八谷先輩がソファにいたので、驚いてまた倒れてしまいそうだった。

「は、八谷先輩……起きてください……」
恐る恐る声をかけたが、八谷先輩は美しい寝顔を崩さずに、ピクリともしないで眠っている。この姿を写真に収めて売ったら結構いい商売になりそうだな……なんて考えながらも、私はもう一度強く彼の肩を揺すった。
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